2005年 11月 28日
アバクロの光と影 |
サンクスギビングあけの休日はアメリカではショッピングの日 Black Friday。
これから12月末までのホリデイシーズンでアメリカの年間消費の30%だかがされるときいたんですが、このショッピング熱はすさまじいものがあります。。。
サンクスギビングの由来に関してはNYlawyerさんのページに鋭い考察がありますが、私はこのような理解でおりました。このイベントは宗教が関係ない、全国民あげてのイベントといえましょう。結果盆暮れ正月なみ「帰省ラッシュ」。
スーパーもしまってしまいます。サンフランシスコは都会なので一応店はあけますが午後2時とかにしまるので、寝坊した私は買出しにすっぴんではしっていきました。
で、その翌日からサンクスギビングセールがはじまります。
私は混んだお店で買い物は苦手なのですが、近所の友人に引っ張り出されておでかけ。。。
サンフランシスコのダウンタウンのショッピングディストリクトはセール目当ての客、観光客、そして間が悪い?SF International Auto Showの開幕で、駐車場所なんて全くないので「キャブをシェアしていこう!」とさそわれたわけです。
友人のお目当てのひとつはAbercrombie & Fitch。アバクロって呼ばれて日本でも大人気の若者ブランドですね。
私は中学の頃くらいからちょこちょこアメリカに遊びに来ていたのでそのころから、Abercrombie & Fitchというブランドは、なんとなくしってました。ああ、あのいけてないアウトドア用品くらいのイメージだったんですけどね。
それが、今回アメリカに来たときには「お土産にアバクロのデニム」とか頼まれることが増え、いつの間にブランド戦略を変更したのだろうとびっくりいたしました。
(アバクロ Key Statistic)
・・・一応会計士なので、企業の話をするときは消費者としての直感的印象だけでなく、数字を混ぜようかと。ソースはこちら。M=100万ドル。1億って考えてください。
売上高 2005年1月 2,021M 2004年1月 1,707M 2003年1月 1,595M
Net Income 2005年1月 216M 2004年1月 204M 2003年1月 194M
これだけみても「成長企業かな、業績も順調に伸びているし」ということ以外わかりにくいんですが 似たラインのAmerican EagleやGAPとの比較をみてみましょうか。 同業他社に比べ高いEPS、高いGross Margin(モノの割りに高く売れてるっていうことですね)が目に付きますね。
私のアナリシスは、金融機関担当時の「査定の監査」によって培われてしまった実
(アバクロ光の歴史)
そもそも、このブランド、意外な老舗なのでした。1892年、デイビッド・アバロクロンビー氏がニューヨークでキャンプ、狩猟などの専門店を始めたことにさかのぼり、その後エズラ・フィッチ氏が経営に参加し、1904年に現在のアバクロンビー&フィッチという社名に。
アバクロンビ氏はその後経営から離れたそうですが、フィッチ氏はやり手だったようで、カタログ販売とい手法でアバクロを全国規模のアウトドア・スポーツの衣料用品店に。アメリカのアウトドア用品のメールオーダーといわば、私が中学くらいの頃LLビーンとか、はやったんですが、アバクロが先なのかもしれませんね。
このブランド「セレブ」に人気なのは昔からで、へミングウェイやセオドア・ルーズベルト、フーバー、アイゼンハワー、ハーディング、ケネディなど歴代大統領に俳優がずらり、顧客リストは華やか。
しかし、1970年代から経営危機に陥いって、買収から買収でいくつかの大企業の手を渡り歩く運命をたどります。最終的には大手アパレル、リミテッド社の傘下におさまりますが。
その後、1992年、マイケル・ジェフリーズ氏のCEO就任以降、アバクロの変貌が。ちょっと垢抜けないアウトドア系アメリカンカジュアルから、20代前半をターゲットに古着風のカジュアルブランドへと転換。大胆でセクシーな広告も注目をあつめ、若者層から絶大な支持を獲得。ジェフリーズCEOの強力なリーダーシップのもと経営革新を行い、毎年30%を超える成長、1993年から1996年で売上高が約3倍に。1996年NYSE(再?)上場、1998年5月にはリミテッド傘下からの独立を果たしました。
(アバクロの影)
2003年6月、サンフランシスコにおいてヒスパニック系・アジア系の若者グループがアバクロを人種差別問題で提訴しました。理由は、販売店での接客など、表の仕事は白人のみでおこない、白人以外は販売員として採用さても倉庫番や配送など外にでない仕事のみをまわされ、また人種を理由とした差別や解雇が横行、不当な扱いを受けたというものでした。
ジェフリーズCEOは「人種差別など絶対ありえないが、訴訟の長期化は経営に差し支える」とのコメントを出して5千万ドルの和解金を支払うこと、マイノリティーの人権をサポートする非営利組織との連携。。。などを条件に和解しています。
その後もアディダスの商標が真似しているだとか、セクシーすぎる広告がキリスト教団体から糾弾されたり、CEOの給料が高すぎると投資家から批判があったりとか、話題に事かかないブランドです。
さて、今日のアバクロはレジには可愛い黒人の女の子、フィッティングにはフィリピーのお兄さん。もともと訴訟がおきるほど人種ミックスの高いサンフランシスコ店です、ぬかりはありません。だけどルックス選抜は絶対あるな~。みんなすらっとしててかわいいのです。
カタログを見れば一目両全なんですが、このブランドは今だって、「ルックスのいい白人の子」に着られることを前提にしている、と思う。
色合いとか、Tシャツとか鮮やかな緑とか、くすんだブルーとかかなりでるんですが、これって白人以外にはすごく難しい色の一つですね。
コレが難しいところで、「ああいうふうに着てみたい」と思わせるブランドのイメージを打ち出すことって、差別なのでしょうか?自社イメージに合ったルックスのいい店員を販売員として雇うこと)自体も差別?
サンフランシスコに本社をおくGAPの広告は、必ずや人種ミックスであります。旗艦店の販売マネジャーは黒人だそう、太ったオバちゃんの販売員も華奢な中国系の若い販売員もおそろいのポロシャツで店舗を駆け回る、そこには安心感はあるけれど、アバクロのように「おっ」とつい見てしまうようなデザインもなかったり。
アメリカのような国で「普遍的な」ブランドになると、とんがってお洒落であることとか、難しいのかもしれないですね。
(GAPの高級ラインのBanana Republicの広告はほとんど白人ですが。。。)
ちなみにアバクロって日本語のWebsiteもずいぶん前からあって、来年秋には日本進出という話ですね。
けれど、このブランドがここにいたる背景を知らないで、「好きなブランドはアバクロー」とか、日本の若い子が言っていたら、、、ちょっと、複雑です。
そもそも20代前半がターゲットということで、アメリカではかなりカジュアルなブランド、お値段も可愛らしいものですが縫製もさほど良くはない。(よってあのグロスマージン率を達成していると)だから、ものすごく「お洒落な」もの、着てたらちょっと自慢できるもの、とかではないかな。
私の世代の人間は、自分達の世代より若向けなこともあり、「外に着ていく」より、普段着とかジムウエアにいいから。。。と言い訳しながら買ってますね。それでも人気なんですけども。
一緒に買い物にいった中国系のJも、まさに「これジムにいいかなー」などといいながらなんとなく言い訳めいた口調で商品を手に取り、
―試着していると、「アジアンのお前がそれ着るの?」という目で前は見られたもんだし。なんかちょっと買うのが今でも恥ずかしいんだよなー。
―そんなにいうならかわなきゃいいじゃーん。
―でもこのジーンズ39ドルだよ?ここのダメージ具合がかっこよくない?
―えぇー、、、、かわいい、わたしも買うー。。。。
まあ、買わせちゃうところがブランドの力、なのだとすれば侮れないですね。
ちなみに、日本ではアバクロを着てる男の子って「メトセク」系な感じらしいですが、サンフランシスコではアバクロばっかりきてる男の子は、ゲイとして認定されます。。。
by lat37n
| 2005-11-28 05:43
| US Biz News