2005年 11月 11日
ファニー・メイのRestatement;保険リスクの移転 |
過去の決算修正、Restatementは「よく問題になる会計処理」の宝庫。(なんか会計Geekみたいな発言だな。。。)
今日は、ファニー・メイのRestatementがリリースされてました。
(WSJより抜粋)
Fannie said the policy, for which it paid a premium of about $35 million, didn't transfer sufficient risk to the insurer to qualify for accounting as insurance. Instead, it will be treated as a deposit. Regulators have been cracking down on so-called finite-risk insurance policies that can be used to smooth earnings.
Fannie said it expects that the change in accounting for that insurance policy won't have any cumulative effect on its financial condition but will affect restated results for certain past periods.
ファニー・メイによると、$35Mの保険料支払いに関し保険会社に「重要なリスク(=一定の状況において損失を補填するという行為)」が移転されていなかったため、保険会社が保険契約として会計処理ができなかったということです。
代わりに当該金額は預金として会計処理されます。
監督当局は、いわゆるFinite-risk保険が利益の平準化に利用されていることに関し取締りを強化していたところであります。この会計処理の修正には累積的な影響はありませんが過去数年間にわたって決算を修正することになります、、、、とのこと。
若干保険業界マニアックス的なんですが、finite-Riskとは、「保険リスクが制限されている損害保険契約」というところでしょうか?AICPAより実務指針(TPA1200.07)が2005年に発表されたところです。
Finite-Risk保険の例としては、
・支払われる保険金に限度が設定されている場合(Cap)。例えば、保険会社は保険料の200%を超えては、支払責任を負わないというもの。
・損失補てんを段階的に定めるもの(Loss Corridors)。例えば50万ドルの契約のうち、最初の10万ドルと、20万ドルと50万ドルの間の40万ドルについては、保険会社が負担する。10万ドルから20万ドルの間の10万ドルは契約者が自己負担する。
というようなものですね。
GAAP上は、FASB Statement No.5及びNo.113で保険者(保険会社)が保険契約者(この場合のファニーメイ)に「補填をしないもの」は、保険としてではなく預託(deposit)として会計処理をする指針があります。
契約上の保険リスクの移転を制限する要素が多いほど保険として会計処理することが難しくなり、預託として会計処理をすることになります。つまり、ファニーメイは「保険を支払った」として保険金を期間に応じて費用配分していたのだと思いますが、それは「条件が多すぎて実質保険とは認められないもの」なので、預金として処理をしましょうね、という話。
利益としてはプラス方向でしょうが、「保険ともいえないものに利息ももらわないで35Mもつっこんでいたのか?それでいいのか?」となると、問題なわけですね。ファニーに保険を売っていた保険会社のほうが、実際大幅減益となることでしょう(計上していた保険料収入が、全部負債に変わってしまうわけで)。
ただ、これ、保険期間満了後の処理はどうなるんだろう。全額帰ってこないのなら、そこで損失がでるのかな?新聞記事だけだとどういう保険なのか、ちょっとわかんないですね。
保険会社の会計処理はかように難しい。。。実際のところ、保険契約に関して「実質的に”Significant”なリスクを保険会社が担保しているか?」という議論になるんですが、保険に関しての理解と業界慣習なども知らなくてはいけないですしね。金融機関の会計処理は難しいものが多いですが、中でも非常に「実質的判断」を要求されるものであるといえましょうか。
Fannie said it also made "errors" in accounting for the value of some securities and loans, for potential losses on guarantees of mortgage securities held by others, and on past investments in low-income housing and partnerships developing synthetic fuels. The company didn't provide estimates of the impact of any of these findings but said the synthetic-fuel investments were small and shouldn't have a significant effect on results.
で、さらに、ファニー・メイによると、有価証券と貸付金、他者の保有するモーゲージ債の保証における発生の可能性のある損失、および低所得者向け住宅購入への投資、合成燃料開発のパートナーシップへの投資、等の評価について、誤りが見つかりました。ファニー・メイはこれらの発見に関しての見積もりは発表していませんが、合成燃料開発のパートナーシップへの投資に関しては小額であり、決算における重大な影響はないとしています。
・・・・で、どう考えてもこの、まだ公表されていない投資ロスの合計金額の方がインパクト大きいんだろうなあ。。。笑。
今日は、ファニー・メイのRestatementがリリースされてました。
(WSJより抜粋)
Fannie said the policy, for which it paid a premium of about $35 million, didn't transfer sufficient risk to the insurer to qualify for accounting as insurance. Instead, it will be treated as a deposit. Regulators have been cracking down on so-called finite-risk insurance policies that can be used to smooth earnings.
Fannie said it expects that the change in accounting for that insurance policy won't have any cumulative effect on its financial condition but will affect restated results for certain past periods.
ファニー・メイによると、$35Mの保険料支払いに関し保険会社に「重要なリスク(=一定の状況において損失を補填するという行為)」が移転されていなかったため、保険会社が保険契約として会計処理ができなかったということです。
代わりに当該金額は預金として会計処理されます。
監督当局は、いわゆるFinite-risk保険が利益の平準化に利用されていることに関し取締りを強化していたところであります。この会計処理の修正には累積的な影響はありませんが過去数年間にわたって決算を修正することになります、、、、とのこと。
若干保険業界マニアックス的なんですが、finite-Riskとは、「保険リスクが制限されている損害保険契約」というところでしょうか?AICPAより実務指針(TPA1200.07)が2005年に発表されたところです。
Finite-Risk保険の例としては、
・支払われる保険金に限度が設定されている場合(Cap)。例えば、保険会社は保険料の200%を超えては、支払責任を負わないというもの。
・損失補てんを段階的に定めるもの(Loss Corridors)。例えば50万ドルの契約のうち、最初の10万ドルと、20万ドルと50万ドルの間の40万ドルについては、保険会社が負担する。10万ドルから20万ドルの間の10万ドルは契約者が自己負担する。
というようなものですね。
GAAP上は、FASB Statement No.5及びNo.113で保険者(保険会社)が保険契約者(この場合のファニーメイ)に「補填をしないもの」は、保険としてではなく預託(deposit)として会計処理をする指針があります。
契約上の保険リスクの移転を制限する要素が多いほど保険として会計処理することが難しくなり、預託として会計処理をすることになります。つまり、ファニーメイは「保険を支払った」として保険金を期間に応じて費用配分していたのだと思いますが、それは「条件が多すぎて実質保険とは認められないもの」なので、預金として処理をしましょうね、という話。
利益としてはプラス方向でしょうが、「保険ともいえないものに利息ももらわないで35Mもつっこんでいたのか?それでいいのか?」となると、問題なわけですね。ファニーに保険を売っていた保険会社のほうが、実際大幅減益となることでしょう(計上していた保険料収入が、全部負債に変わってしまうわけで)。
ただ、これ、保険期間満了後の処理はどうなるんだろう。全額帰ってこないのなら、そこで損失がでるのかな?新聞記事だけだとどういう保険なのか、ちょっとわかんないですね。
保険会社の会計処理はかように難しい。。。実際のところ、保険契約に関して「実質的に”Significant”なリスクを保険会社が担保しているか?」という議論になるんですが、保険に関しての理解と業界慣習なども知らなくてはいけないですしね。金融機関の会計処理は難しいものが多いですが、中でも非常に「実質的判断」を要求されるものであるといえましょうか。
Fannie said it also made "errors" in accounting for the value of some securities and loans, for potential losses on guarantees of mortgage securities held by others, and on past investments in low-income housing and partnerships developing synthetic fuels. The company didn't provide estimates of the impact of any of these findings but said the synthetic-fuel investments were small and shouldn't have a significant effect on results.
で、さらに、ファニー・メイによると、有価証券と貸付金、他者の保有するモーゲージ債の保証における発生の可能性のある損失、および低所得者向け住宅購入への投資、合成燃料開発のパートナーシップへの投資、等の評価について、誤りが見つかりました。ファニー・メイはこれらの発見に関しての見積もりは発表していませんが、合成燃料開発のパートナーシップへの投資に関しては小額であり、決算における重大な影響はないとしています。
・・・・で、どう考えてもこの、まだ公表されていない投資ロスの合計金額の方がインパクト大きいんだろうなあ。。。笑。
by lat37n
| 2005-11-11 03:15
| 会計基準