2006年 04月 03日
信頼性と即時性のハザマで - 早期提出登録企業の10kデッドライン |
まずは、3行バージョン。
「2005年12月15日以降終了した年度、早期提出登録企業=Accerelated Filer(Public equity floatが$75M以上@the end of 2nd Qの会社)は75日以内に10kアニュアルレポートをファイルしなくてはいけません。」
これ、もともとは過去長い間、90日でありました。それが、2004年12月決算から75日以内になり、2005年12月決算においても実は当初目標が60日だったのですが、Internal Control Reportingの負荷を考慮し、12月15日に公開会議、12月21日にファイナルレターというぎりぎりのタイミングでSECからレターが出て、2005年12月決算に関しては75 日でGoということになったのでした。そして、2006年12月決算以降、大規模上場企業のファイリングは60日以内とさらに短縮されます。
目的としては、情報の適時性を高めるということ、それから、「決算発表での数値と10kの数字が違うこと」をSECが好ましく思っていないことがあり、その是正にあるのだと思います。10kのほうが「本当の数字」であり、そのGAPを少なくしていこう。。。という動きの一環ですね。前にWSJで読んだのですが、2004年、Standard & Poor's 500-stock indexの会社のProfoma上の利益は後日公表される10K Annual Report上のGAAPに準じた利益より14%高かった、という調査結果があったそうで(それをGAAP GAPなんていったりする)。10Kがあんまり後から出てくると投資家が10kの「ほんとの利益」に注目しないというのを懸念しているのでしょうね。
そっかー、そうするとthe end of busy seasonは2月になって3月は来年はゆっくりできそうだな。。。(すごく希望的な観測をすれば)
さらに正確には、2006年度の決算以降、Accerelated FilerがLarge Accerelated Filer(Public equity floatが$700M以上)とAccerelated Filer(Public equity floatが$75M以上$700M未満)に分別され、Large Accerelated Filerのみが次の決算から60日ルールを適用しなくてはいけないと言うことになります。Largeでない、普通のAccerelated Filerは75日ルールの適用を継続できます。
ちなみに、Accerelated Filer以上がSox404の拘束もうける、「大規模(公開)会社」というイメージでしょうか。75M以下の小規模会社については404のレポーティングは2007年7月15日以降終了する事業年度まで延期が決まっております。
75Daysということは今年は3月16日までだったんです。だから、当初、見通しの甘かった私はその週末にはスキーでも行こうとか思ってたわけですね。
・・・その割に、3月31日の午後2時ごろ(東海岸5時)までクライアントがちゃんとFileできたかを目を血走らせながら見守ってました。
これは、NT10kをFileすることで期限を延ばすというオプションが存在しており、それを使った一番遅いdead lineは今年も90Daysだったのでした。
一方で、たとえば大型のMergerを控えていたりした場合、S-4をファイルできるのは直近決算の10-kをファイルしたあとという縛りがあるので、ぐずぐずしている間に買収の競合が現れてまとまりかけた話を壊されたりしたら大変、と、そういう会社はともかく早く10kをファイルしてしまおう、なんていうプレッシャーがかかることもあったりしなくもなかったり(苦)。「今出すって言うならDesiclaimerですがよろしいですか」とこっちも笑顔で言い返すしかないんですが。
確かにQ1が終わる頃に決算の追加的な情報が出るよりは60日以内に詳細なレポートを見れたほうがいいですよね。日本もこの数年間、会計システムの整備を進めた大企業を中心に決算発表の日付が早くなる傾向にありました。決算発表が早い会社として知られているのが花王なんかで、1週間もたたない間に決算発表がある(でもって多額の修正があったことも過去にあるんですけどね)。
実際のところ、アメリカではかなりの数の大企業が60日以内に10kをファイルしています。Fortune100企業をさっと拾うと、
Exxon Mobil 2/28/2006
Wal-Mart 3/29/2006(これは2006年1月31日決算に対してなので60日以内)
General Mortors 3/28/2006*
Chevron 3/1/2006
Ford Motors 3/1/2006
ということになっております。本当に早い企業だと、2月10日位にファイルしてたりしますね。
一方、10kの情報量を考えて、60日っていうのはかなり厳しい会社が多いのもまた事実。
上記で唯一GMがLate Filingなんですが、GMのNT10kによれば、
General Motors Corporation (“GM”) is unable to file its Annual Report on Form 10-K by March 16, 2006, due to an accounting issue regarding the classification of cash flows at ResCap, the residential mortgage subsidiary of GMAC, a wholly owned subsidiary of GM.
ということ。GMは金融子会社GMACをPEに売却しているのですが、そのCash Flowの引っこ抜きで手間取ったというのが表向きの理由のようですね。
GMはQ4に入ってから大きなRestatementもありまして、その関係で2004年、2005年とGMはMaterial Weakness(Internal Controlへの監査意見はAdverse)をレポートしています。経営難で子会社のスピンオフもあり、会社内部も人のターンオーバーが多く、混乱した状況が予想されます。そういう場合、「75日以内」ですらかなり厳しいですね。修羅場が想像ついて胸が痛い。しかも、監査人であるDT、すでに訴えられてるんですよね。。。
Material WeaknessがInternal Controlの重要な部分で出ているけれども、財務諸表にUnqualified Opnion‐無限定適正をつける、ということは、会計監査サイドのSCOPEも広がっているということなんです。要は、内部統制に依拠することを前提で「試査」によって合理的な基礎を形成するというのが現代の監査でありながら、内部統制は有効でなかった、というわけなので。そのような問題があった場合、Internal Control Reportingの監査も終わって60日って相当タイトです。
なので、60Daysというのは、経営健全で、かなり会社のシステムが整備されていて整斉と決算作業が進み、大きなAdjustmentなんて出ないような「綺麗な」会社じゃないと、難しい。
どんなにリソースの豊富な大企業であったとしても、会社規模が大きければ決算過程も内部統制も複雑ですし、合併が多かったりするとさらに難しくなります。
ただ、米国で700MM以上の資本を集めて上場しつづけるって言うのは、そこまでできないといけないということのようです。ある意味、問題のない会社という指標になりますね。
実務を考えて、日本の大企業の決算は、多くの場合「経理この道20数年」みたいな「経理屋さん」なおじさんたちによって支えられています。会社の決算を間に合わせるためには徹夜も辞さない、若手会計士の生半可な知識なんて鼻で笑い飛ばす、頼もしいおじさんたちです。日本で同様のルールが適用された場合、プロジェクトX張りの気合でがんばってくれそう。な気がします。「うちだけ遅れるなんてみっともないことは許されないんだ!」なーんて。
そういうおじさんたちのいないアメリカ。多くの人が自らもCPA資格を保有し、専門職意識がつよく、ターンオーバーが異常に早いのがアメリカの上場企業の経理財務で、会社への忠誠心とかでは誰も動きません。
来年多くの大企業でまたやっぱり大変なことになるのだろうな~と、今年の締め切り直前の「合宿」を思い出しながら憂えるのでありました。
「2005年12月15日以降終了した年度、早期提出登録企業=Accerelated Filer(Public equity floatが$75M以上@the end of 2nd Qの会社)は75日以内に10kアニュアルレポートをファイルしなくてはいけません。」
これ、もともとは過去長い間、90日でありました。それが、2004年12月決算から75日以内になり、2005年12月決算においても実は当初目標が60日だったのですが、Internal Control Reportingの負荷を考慮し、12月15日に公開会議、12月21日にファイナルレターというぎりぎりのタイミングでSECからレターが出て、2005年12月決算に関しては75 日でGoということになったのでした。そして、2006年12月決算以降、大規模上場企業のファイリングは60日以内とさらに短縮されます。
目的としては、情報の適時性を高めるということ、それから、「決算発表での数値と10kの数字が違うこと」をSECが好ましく思っていないことがあり、その是正にあるのだと思います。10kのほうが「本当の数字」であり、そのGAPを少なくしていこう。。。という動きの一環ですね。前にWSJで読んだのですが、2004年、Standard & Poor's 500-stock indexの会社のProfoma上の利益は後日公表される10K Annual Report上のGAAPに準じた利益より14%高かった、という調査結果があったそうで(それをGAAP GAPなんていったりする)。10Kがあんまり後から出てくると投資家が10kの「ほんとの利益」に注目しないというのを懸念しているのでしょうね。
そっかー、そうするとthe end of busy seasonは2月になって3月は来年はゆっくりできそうだな。。。(すごく希望的な観測をすれば)
さらに正確には、2006年度の決算以降、Accerelated FilerがLarge Accerelated Filer(Public equity floatが$700M以上)とAccerelated Filer(Public equity floatが$75M以上$700M未満)に分別され、Large Accerelated Filerのみが次の決算から60日ルールを適用しなくてはいけないと言うことになります。Largeでない、普通のAccerelated Filerは75日ルールの適用を継続できます。
ちなみに、Accerelated Filer以上がSox404の拘束もうける、「大規模(公開)会社」というイメージでしょうか。75M以下の小規模会社については404のレポーティングは2007年7月15日以降終了する事業年度まで延期が決まっております。
75Daysということは今年は3月16日までだったんです。だから、当初、見通しの甘かった私はその週末にはスキーでも行こうとか思ってたわけですね。
・・・その割に、3月31日の午後2時ごろ(東海岸5時)までクライアントがちゃんとFileできたかを目を血走らせながら見守ってました。
これは、NT10kをFileすることで期限を延ばすというオプションが存在しており、それを使った一番遅いdead lineは今年も90Daysだったのでした。
一方で、たとえば大型のMergerを控えていたりした場合、S-4をファイルできるのは直近決算の10-kをファイルしたあとという縛りがあるので、ぐずぐずしている間に買収の競合が現れてまとまりかけた話を壊されたりしたら大変、と、そういう会社はともかく早く10kをファイルしてしまおう、なんていうプレッシャーがかかることもあったりしなくもなかったり(苦)。「今出すって言うならDesiclaimerですがよろしいですか」とこっちも笑顔で言い返すしかないんですが。
確かにQ1が終わる頃に決算の追加的な情報が出るよりは60日以内に詳細なレポートを見れたほうがいいですよね。日本もこの数年間、会計システムの整備を進めた大企業を中心に決算発表の日付が早くなる傾向にありました。決算発表が早い会社として知られているのが花王なんかで、1週間もたたない間に決算発表がある(でもって多額の修正があったことも過去にあるんですけどね)。
実際のところ、アメリカではかなりの数の大企業が60日以内に10kをファイルしています。Fortune100企業をさっと拾うと、
Exxon Mobil 2/28/2006
Wal-Mart 3/29/2006(これは2006年1月31日決算に対してなので60日以内)
General Mortors 3/28/2006*
Chevron 3/1/2006
Ford Motors 3/1/2006
ということになっております。本当に早い企業だと、2月10日位にファイルしてたりしますね。
一方、10kの情報量を考えて、60日っていうのはかなり厳しい会社が多いのもまた事実。
上記で唯一GMがLate Filingなんですが、GMのNT10kによれば、
General Motors Corporation (“GM”) is unable to file its Annual Report on Form 10-K by March 16, 2006, due to an accounting issue regarding the classification of cash flows at ResCap, the residential mortgage subsidiary of GMAC, a wholly owned subsidiary of GM.
ということ。GMは金融子会社GMACをPEに売却しているのですが、そのCash Flowの引っこ抜きで手間取ったというのが表向きの理由のようですね。
GMはQ4に入ってから大きなRestatementもありまして、その関係で2004年、2005年とGMはMaterial Weakness(Internal Controlへの監査意見はAdverse)をレポートしています。経営難で子会社のスピンオフもあり、会社内部も人のターンオーバーが多く、混乱した状況が予想されます。そういう場合、「75日以内」ですらかなり厳しいですね。修羅場が想像ついて胸が痛い。しかも、監査人であるDT、すでに訴えられてるんですよね。。。
Material WeaknessがInternal Controlの重要な部分で出ているけれども、財務諸表にUnqualified Opnion‐無限定適正をつける、ということは、会計監査サイドのSCOPEも広がっているということなんです。要は、内部統制に依拠することを前提で「試査」によって合理的な基礎を形成するというのが現代の監査でありながら、内部統制は有効でなかった、というわけなので。そのような問題があった場合、Internal Control Reportingの監査も終わって60日って相当タイトです。
なので、60Daysというのは、経営健全で、かなり会社のシステムが整備されていて整斉と決算作業が進み、大きなAdjustmentなんて出ないような「綺麗な」会社じゃないと、難しい。
どんなにリソースの豊富な大企業であったとしても、会社規模が大きければ決算過程も内部統制も複雑ですし、合併が多かったりするとさらに難しくなります。
ただ、米国で700MM以上の資本を集めて上場しつづけるって言うのは、そこまでできないといけないということのようです。ある意味、問題のない会社という指標になりますね。
実務を考えて、日本の大企業の決算は、多くの場合「経理この道20数年」みたいな「経理屋さん」なおじさんたちによって支えられています。会社の決算を間に合わせるためには徹夜も辞さない、若手会計士の生半可な知識なんて鼻で笑い飛ばす、頼もしいおじさんたちです。日本で同様のルールが適用された場合、プロジェクトX張りの気合でがんばってくれそう。な気がします。「うちだけ遅れるなんてみっともないことは許されないんだ!」なーんて。
そういうおじさんたちのいないアメリカ。多くの人が自らもCPA資格を保有し、専門職意識がつよく、ターンオーバーが異常に早いのがアメリカの上場企業の経理財務で、会社への忠誠心とかでは誰も動きません。
来年多くの大企業でまたやっぱり大変なことになるのだろうな~と、今年の締め切り直前の「合宿」を思い出しながら憂えるのでありました。
by lat37n
| 2006-04-03 15:16
| 会計基準